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ホーム > 本さえあれば、日日平安 > 2020/07/10:更新  
Column Peaceful Days 本さえあれば、日日平安

2020/07/10のコラムです。

コラムの内容
 
鞄に本だけつめこんで

著者:
群ようこ
出版社:
新潮社
学校が再開され電車内に以前の賑やかさが戻ってきた。いつも同じ車両に乗っていた女子高生達とも再会。といっても知り合いではない。ほぼ毎日見かけてはいたが、挨拶すらしたこともない。でも、つい「久しぶりじゃね~」と言ってしまいそうな自分が怖い。
ここでホントに声を掛けてしまったら警察に通報されるか、ネットで晒され炎上するかのどちらかだ。今まで通り本を読んでいる知的で素敵なおじさま?を装いながら、彼女たちの会話を聞くともなしに聞いているのが無難だ。

試験があるらしく参考書を開いている彼女たちは、昔ながらの暗記用の赤シートを片手に、「高校の先生は教科書を読んどるだけでつまらん。中学校の授業の方が面白かった。」、といった話をしていた。
確かにそうだったかも知れない。授業中によく話が脱線した歴史の先生を思い出す。試験には出ることのないウンチクや偉人たちの裏エピソードは、教科書よりも断然面白かった。
どんな先生と出会うか、中高生にとってはとても重要なことだ。

群ようこ・著『鞄に本だけつめこんで』(新潮文庫)の中に、著者が中学生だった時のエピソードがある。
数学が一番苦手だったが、その苦手な教科の先生が中学一年生の時の担任だった。その先生は教科書を使わず、ガリ版刷りで作ったプリントを持ってきては授業を行った。しかも、そのプリントは生徒ごとに違っていて、その生徒が間違えた問題を、少し変えて個人別に刷ったものだ。個々のレベルに合わせた「個別の教科書」を作っていたのだ。

英語の先生はできの悪い生徒を小バカにし、どんどん授業からおきざりにしていく。国語の先生は漢字が読めない生徒を立たせて、ガーガー説教した。そんな目にあわされ、授業中も鉛筆すら手にせず運動場を眺めていた生徒も、数学だけは頭をポリポリかきながら、先生が自分のために手作りしてくれた問題に意欲的に取り組んでいた。

「学校にいるときだけ、一所懸命勉強して、家に帰ったら好きなことをやれ」というその先生は、本を読むのが好きな著者に「森田たまの『もめん随筆』ってとてもいい本だから読んでごらん」と薦め、著者にとって「読書の方向づけ」をしてくれた人だという。

いいエピソードだと思う。本書は、そんな読書愛があふれ出す名ブックエッセイ…であることは間違いない。しかし電車内で読むのはお薦め出来ない。男の子をいじめる一方で本もむさぼり読むという文武両道だった群ようこの読書エッセイである。声を出して笑ってしまうエピソードが満載なのだ。

歩く人間爆弾、恐怖の引っ越し魔の父親。黙って会社を辞めてしまった著者に「あんたは奴隷だ!」とSM女王のように言い放つ母。愛猫トラちゃんをイジメ…ではなく可愛がる方法が具体的に書かれているが、それは良い子は決してマネしてはいけないマル秘テクニックだったりする。
梶井基次郎『愛撫』を紹介した「かわいい家族、猫」、志賀直哉『網走まで』を紹介した「ドキドキしながら読んだ教科書」は、特に人前で読んではいけない。「知的なおじさま」を「痴的なオヤジ」に変えてしまう威力がある。

私は身のまわりの出来事やエピソードを書くようにしているが、読んだ本を紹介するということは、「変な私」や「恥ずかしい私」をさらけ出すことだと教えてくれ、「コラムの方向づけ」をしてくれたのが本書なのだ。
 
  (2020/07/10おわり)
 
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