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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)

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政宗九がおすすめする本です。


某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。

2023/07/18 更新

あなたも3分でミステリ通になれる(仮)


政宗九がおすすめする本です。


フィクション

星を継ぐもの

著者:ジェイムズ・P・ホーガン

出版社:東京創元社

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星を継ぐもの

ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』は、言わずと知れたSFの伝説的大傑作です。
創元SF文庫で1980年に刊行以降、版を重ね、2018年には「100刷」を突破。SNSでは「あなたが持っている『星を継ぐもの』は何刷?」という企画も行われたりしました。
私が持っているのは……実は、何度か引っ越しするうちに処分してしまい、無くなってしまいました。なので、何刷だったかは不明です。
名作を読み返したいな……と思っていたタイミングで、なんと新装版が出ました。早速買って読み、感動と驚きを新たにしました。

時は近未来。今回読み返してみたら、2028年、という設定でしたので、あと5年後です。
月面で、見たことのない真紅の宇宙服を身にまとった死体が発見されます。
調査の結果、なんと、死体は5万年も前に死亡し、月面でずっと眠っていたことが判明します。しかも、ほとんど現代人と瓜二つの容姿でした。5万年前に宇宙開発するくらいの文明があったのなら、なぜその痕跡が地球には残されていないのか?

これはほんの「さわり」で、ここから驚くべき物語がどんどん展開されます。
そして最もすごいのは、この死体の謎の真相。ミステリとしてめちゃくちゃ驚きます。そして同時に、SFが持つセンス・オブ・ワンダーの想像力の素晴らしさに感嘆するのです。

私(をはじめ、同世代のミステリマニア)が『星を継ぐもの』を知ったのは、評論家・瀬戸川猛資さんの評論でした。『夜明けの睡魔』(創元ライブラリ)に収録されていますが、ネット上でも「ALL REVIEWS」で読むことができます。

『謎また謎、である。だが、すごいのはこのあとで、これだけ錯綜した謎が、まことに単純明解に、論理的に解き明かされ、しかもすばらしい意外性に満ちている。不可解な謎の提出、中段のサスペンス、論理による謎解きと結末の意外性。こういう種類の小説を、ぼくらは本格推理小説と呼んでいるのではあるまいか。』

空想科学本格推理小説(『星を継ぐもの』書評) 瀬戸川猛資

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