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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2023/07/23 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


ノンフィクション

気になる部分

著者:岸本佐知子

出版社:白水社

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気になる部分

前回のコラム『漫画 君たちはどう生きるか』にて、かつて商店街の店が我が社にとっての「虎の穴」であり、一人前の書店員になるための修行の場だったと記した。それで思い出した。入社間もない新人君を悩ませた「雑誌名しりとり」という伝説の苦行があったことを。雑誌の名前という縛りはあるが、ルールは一般の「しりとり」と同じ。たいがいが「しりとり」の「り」から始めるのだ。

音もたてずに背後からやって来た先輩社員が、ある人はドラえもん口調で、またある人は「タッチ」の浅倉南のように「雑誌名しりとり」と声を掛ける。
もちろん新人君たちに拒否権はない。即答を求められ、考える余裕もない。「り、り、り・・、りぼん!」とつい答えてしまう。
「ブッブー」である。残念ながら最後が「ん」だ。

先輩はフフフと不敵な笑みを浮かべ、「旅行読売」と答えて再度「り」で攻める。他には「LEE(リー)」や「リーダーズダイジェスト」があるが、若い頃バンドマンで音楽通をきどる先輩は、「リズム&ドラム・マガジン」とハナタカに答え墓穴を掘ることもある。
雑誌だけに〇〇〇マガジンという誌名が多いので、仕掛ける側も要注意なのだ。

新人君は「雑誌もくろく」を携帯し、ことあるごとにめくっては頭に入れる。まるで『赤尾の豆単』、もしくは『試験に出る英単語』のようだ。そのうち、あることに気付く。「き」始まりは、近代○○という誌名で数を稼げるではないか!
「近代建築」、「近代盆栽」、いまは休刊になったが「近代柔道」や「近代空手」もあった。ここで注意しなければいけないのが「近代麻雀」。そう、マージャンなので最後は「ン」。

そう言えば「近代映画」というのもあった。創刊時のことは知らないが、私たちの時代はアイドル雑誌だった。表紙が山口百恵、榊原郁恵、石野真子、松田聖子、中森明菜・・・、私の推しは、何といっても河合奈保子だった。雑誌以外に写真集を何冊か持っていたが、いつのまにか無くなっていた。結婚したとき妻によって、いま言うところの断捨離されたのだと思う。
ちなみに妻の推しは、映画「砂の器」、TVドラマ「大岡越前」の俳優・加藤剛さんだった。平たい顔族の私とはあまりにも違う。渋すぎる。共通点は全くない・・・と思っていたが、後で調べると、たばこは吸わず、酒も飲まず、ギャンブルとは無縁、というとこは一緒だった。まぁ、彼女と結婚することがギャンブルみたいなもんだったけど…

話を戻す。「雑誌名しりとり」が苦行なのは、徐々に発展していくからだ。誌名の後に発売日も答えるよう求められる。発売日を覚えるのは、お客様から問い合わせされた時の為でもある。それも首都圏ではなく、広島県の発売日でなければならない。「雑誌名しりとり」が苦行と呼ばれる所以だ。
そして雑誌名の後は出版社名、著者名、書名と変わりながら書店特有の「しりとり」は続く・・・

眠れぬ夜の「ひとり尻取り」、満員電車のキテレツさん達、屈辱の幼稚園時代、ヘンでせつない日常を強烈なユーモアとはじける言語センスで綴った、名翻訳家による捧腹絶倒のエッセイ集。

『気になる部分』 岸本佐知子 白水社

今朝起きたら家族が誰も居なかった。オカメインコのキイちゃん、セキセイインコのクーちゃんとピーちゃんの餌と水を取り替え、さて今日は休み、何をしようか?と考えながらスマホでTwitterを見た。広島で書店のイベントがあると思い出した。今から行けるかも・・・と読みかけの『気になる部分』を鞄に入れてJR福山駅に向かう。

訳があって各駅停車に乗る。目的地に最も近い新井口駅までの所要時間は2時間10分、休日なので気にしない。電車内は涼しい、本を読んでいればいいので楽だ。新井口駅には、お昼12時過ぎに到着。
そこからはタクシー、または路線バスというのが普通かもしれないが、歩いた。炎天下を30分。もちろん水分補給と「雑誌名しりとり」をしながら。

しりとり…旅行読売…リーダーズダイジェスト…トランジスタ技術…つり人、と、と、と…とても暑いぜ、広島!

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