空に憧れ、飛行機を追いかけて、誰よりも速く、何よりも自由になりたい。
そんな少年が進む道は、航空自衛隊に入隊し、戦闘機乗りになることだった。

重力からも解き放たれたように空を割いて飛ぶF戦闘機には、理由、因果、思想、正義…数えきれない鎖がかけられてがんじがらめで、それでも彼にはそれ以外選べない。

何かを持っている人。
歩むべき道の決まっている人。
人は、どうやって運命と出会うのだろう。
彼はそれを追い求めたのか、それから逃れられなかったのか。
読んでいるわたしを惹き付けて離してくれない、この物語の主人公、易永透。
彼の胸の中に渦巻いているのは光り輝く星なのか、ぽっかりとあいた空虚なのか。
彼は『持っている』のか『欠落している』のか。

何かに深く祈り終わったように、心の中がいましずかです。
人間にしかないもの、人間というものについて考え続けてしまいます。

読み終えてから戦闘機の動画を延々と検索して見続けてしまっています。
その美しさと恐ろしさよ。