おすすめの本RECOMMEND

KEIBUNSHA

いつか読書をする人へ

いつか読書をする人へ

井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2023/10/14 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

照子と瑠衣

著者:井上荒野

出版社:祥伝社

ショッピングサイト
照子と瑠衣

照子と瑠衣。ともに七十歳。
妻を見下す夫を捨て、
老人マンションの陰湿な人間関係を見限って、
女性ふたりの、逃避行の旅が始まったー。

なんてことが、帯に書いてあったらもう買うしかない。
ていうか、ひとめ見た瞬間からジャケ買いすると決めていた。

七十歳。
どうしよう、あと27年もある。
今からわくわくして仕方がない。

27年と言えば。
27歳の時、手相占いでえらく心配そうにこう言われた。

周りの言うことをよく聞いて。とにかく頑張って、頑張って、頑張ってください。でないと歳を取ってからひとりで孤独に暮らすことになります。

27年間ずっと同じ町に住み、家族や弟妹や犬や猫と暮らし、友達や結婚の決まった恋人もいたわたしは、痛わしげな眼差しの手相見のおじさんにそんなことを言われた時、わたしは年頃の娘らしからぬ感想を抱いてしまった。

歳を取ってって、いくつだろう?中年かもっと先?
誰もいない静かで狭くてさびしい部屋で本を読む老女のわたし。
思い描くと、胸が震えるほどわくわくする。
あの時の気持ちが自分でも説明がつきません。
マリッジブルーだったのかもしれないけど。

あれからちょっと歳を取り、43歳(正確には来月までは42!)になって思ったこと。
誰かと一緒にいても孤独じゃないとは限らないし、ひとりきりでいても誰かと心つながっていることはできる。
あの手相見で言われた『孤独』っていうのはどんな感じのことなんだろう。
積極的に破滅の道を選ぶつもりはないので、いちおうご忠告の通り『頑張って、頑張って、頑張って!(3回も言われた)』いるつもりだけど、何をどう頑張ればいいのかわからないし、もしかしから、この角を曲がると孤独が待っているかもな~と思いながら日々楽しく暮らしています。自分の心を曲げるのがわたしにとって一番耐えられないことだということもわかってきました。きっと『孤独』よりも。
心を曲げられない、頑固さが原因でそうなるって言われたけれど…。やばい?フラグ??

なんにも持っていないように思える照子と瑠衣。
けれど今までの時間や経験は失いようのないもの。
いいこと。わるいこと。幸せ。悲しみ。
これから先、本当に必要なものはきっとそんなにないんだ。これだけは、というものをピックアップしておこうと思います。持ち運べるスーツケースひとつぶんくらいに。
そしてやっぱり、曲げない心も必須アイテムだとわかりました!!絶対持ってきます。



おすすめの本一覧へ